「ありがとう。すごい~!」

 メイクを終えた後は、女子たちの指導のもと。
 これまた、今までほとんど話したことのない男子たちの前で、『お帰りなさいませ、ご主人様』の言い方などのレクチャーを受けた。

 メイド服を着た愛花ちゃんや、他の女子たちも、次々と完成して、集まってきた。愛花ちゃんは予想に違わず、絵本から飛び出たような愛らしさ。


 さらに、メイド服を着た佐々木くん、羽村、三杉も入ってきた。

 三人は、丈の長いクラシックなメイド服で、フルウィッグをつけ、濃い化粧をしているので、一瞬、男性とは分からない。
 でかくてゴツい、『必殺メイド隊』だ。

 小柄な男子の中には、メイド服を着てもあまり違和感のない子もいる。


「じゃあ、人数が増えたとこで改めて、練習を再開します。
 先ほど練習したフレーズを、黒瀬さんに続いて、復唱して下さい。――はい、どうぞ。」

「『お帰りなさいませ。ご……主人様。』」

 皆の注目が集まったことで、何だか気恥ずかしくなり、声がたどたどしくなってしまった。


「え!? 黒瀬さん?」
 今まで気付いていなかった人が、驚愕の声をあげた。

「ご主人様って、あなた、そんな格好で一体何を……!」
 羽村がごちゃごちゃ言い出した。


――うぅ。恥を忍んで言ったのに!!

 誰も復唱してくれなかった。