「黒瀬さん、怖く見えるのが悩みなんですか。」

「そう、もう昔からずっと。きつい眉のせいかなと思って、前髪で隠してみたり、眉カットをしたり、色々試してはみたんだけど……。」

「そうなんですか！？」


　私がそんなことで悩む性格だなんて、思ってもいなかったという住田さんの言葉に。周りの皆も、ウンウンと頷いている。


「怖く見えるから、友だちもできにくいし、小さな子にも怖がられるし。お見合い相手には、初対面の席で第一声、『キミとは結婚しない』とまで言われて……。」

「ええ！？」
「それは、酷すぎー！」

　皆が驚いたり怒ったりしてくれたので、私もつい調子にのって喋り過ぎた。


「――それにしても、黒瀬さんが、こんなに話しやすい人だったなんて、知りませんでした。」

「表情筋が死んでるせいで、何をしても誤解されるの。」

　できれば丁寧語じゃなくて、普通に話して欲しい。


「じゃあ今回は、黒瀬さんが柔らかい雰囲気の女子になるメイクをしちゃいましょう。」

「雰囲気を変えたいなら、ウィッグもオススメです！」

　皆が次々に考えてくれて、私はピンクチークたっぷりの、可愛いタレ目風メイクをしてもらった。

　さらに、金に近い茶色のフルウィッグを被ると、大分、印象が変わる。髪の毛で顔が半分くらい隠れていることもあり、もはや別人のようだ。