エレベーターから降りて、玄関の鍵を開ける際、羽村は鍵を出すこともなく解錠していた。

「鍵、なくても良いんですね~。」
「持っているだけで反応するようになっているんですよ。」

 これ、うちの玄関にも付けたいなあ。荷物が多いときとかに、鍵がいらないのは、とても楽そうだ。


「こっちは何ですか?」

 玄関扉には、もう一つ、鍵が取り付けられている。

「認知症の方の徘徊防止に使われる鍵で、中から開けられないようにできるんですよ。ペットが脱走するのも防げるので、とりあえず付けておきました。」 
「なるほど~。」

 羽村は、やっぱり、ペットを飼いたいようだ。


 私は、羽村の後に続いて、リビングに入った。


――うわあ。

「素敵ですね!」


 とても明るく、それでいて上質な雰囲気に仕上っている。
 白めのフローリング、暖色系のエコカラット。以前に何となく伝えたつもりのイメージが、どこもかしこも、ドンピシャにハマっているのだ。

 私って、ホントに、センスが良かったのかも? 志望する学部を間違えたかもしれない。