植込みに隠れて、会場の方をチラチラ見ていると、変な女の子に話しかけられた。
 女の子は、自分だって子どものくせに、大人みたいな話し方をしている。


「あなた、さっき。本当の親じゃないから、心配しないと言ったでしょう? 本当にそう思う?」

 痛いところを突かれた。

 本当の親じゃないからなんて、ただの、自分への言い訳だ。傷つきたくないから、予防線を張っているだけ。

 そんな気持ちが、普通の家の子に、分かるはずがない――という思いは。
 女の子の次の言葉で、砕けた。


「私は、両親が好きじゃなかったの。
 私を育てたのも、両親ではなかったし。本当に辛かった。」


――え? 
 両親じゃない人に、育てられた?


 感情を削ぎ落としたような表情で。
 どこか遠くを見る眼差しで。
 淡々と辛かった、と言う、女の子。

 このように話せるようになるまでに、どれほどの苦しみがあったのだろう。


「でもね。今は、両親のことが、結構好きなの。
 相手にどう思われるかは問題じゃない。こちらがどう思うかが、大切なんだと思う。」