「無理にとは言わない。でも、入籍してしまえば、議員とて、それ以上はどうにもできないからな。あの議員よりは俺のほうが若いし、いくらかマシだろ。」

「ありがとうございます……!」

 田上先生、何て良い先生なんだ。教え子の危機を救うため、偽装の養子縁組への協力も惜しまないとは。


「もし、どうにもならなければ。そのときは是非、お願いします。」

 私は深々と頭を下げた。


――でも……。


「名前が、田上百佳になると、なんだか別人みたいですね。」

 違和感あるけど、そのうち慣れるのかな? と呟くと。

 田上先生は、何故か、口元を手で押さえて、顔をそむけていた。