次の日。
私は、朝食を食べると、青石兄とともに、春名さんの家に向かった。
グズグズしてると、勇気が出ないので。家の前に着くなり、えいやっと、インターフォンを鳴らすと……。
「はーい?」
聞こえてきたのは、知らない女性の声だ。
「突然、すみません。私、黒瀬百佳と申します。」
「黒瀬? 黒瀬の家のお嬢様ですか?」
「はい。」
「まあ! よく、いらっしゃいました!」
――ん? 思いのほか、歓迎されているような。
バタバタと玄関に出てきたのは、高齢の女性だった。春名さんのお母さんだろうか。私は、ご挨拶をして、玄関先で菓子折りを渡した。
「まあ、まあ! 可愛らしいお嬢さんだこと。」
家に上がるように促された後、私たちはお茶まで出してもらった。
「王明学園に通っておられるんですよねえ、高等科3年生だとか。聞いておりますよ。」
「あ、はい……。」
春名さんが、話したのだろうか。春名さんがお喋りをしているところは、あまり想像できない。
「そうすると、今は受験生?」
「いえ。王明大学に進学することに、ほぼ決まっています。」
優秀なのねえ、と手放しで褒められると、ちょっと反応に困る。