私は、お皿に盛った料理を全て平らげると、外の空気を吸うために、庭の方へと足を向けた。

 入口から少し離れたところまで、ぐるっと歩いた、そのとき。
 植込みの方から、ガサゴソと音がした。


――不審者!!


 ビックリして、体が動かなかった。

 けれど、次の瞬間。
 植込みの中から顔を覗かせたのは、土まみれになった、小さな男の子だった。


――子ども? 何でここに?


 少し歩み寄ると、男の子の方も気付いたのだろう。
 動きを止めて、じっとこちらを見ている。


「ボク? どこから来たの?」

 私が言うと。
 男の子は、ムッとした顔をした。


「おまえ、何歳だよ。こども扱いすんな。」

「私は、8歳よ。あなたは何歳?」
「今日で7歳だ。ほとんど一緒じゃないか!」

 思ったよりも、年が近かった。


「それでも、私の方が年上でしょ。
 もう暗くなったし、親御さんは心配されてるかもよ?」

「親なんて、心配しないよ。
 ――どうせ本当の親じゃないし。」

 自嘲するような言葉に、一瞬、返事に詰まった。


「いなくなったのがアイツなら、違うんだろうけど……。」

 男の子の視線の先、建物のガラス窓の向こう側にいるのは、先ほどの薬品メーカーの社長親子だ。