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 帰りは、田上先生の車で、各々の家や、迎車との待ち合わせ場所まで送ってもらうことに。
 私が最後の一人だ。


「遅くなって悪いな。」
「大丈夫です。うち、そういうのは、わりと緩いので。」

 私が言うと、田上先生は運転しながら、さらに話しかけてきた。


「黒瀬、お前。
 羽村と婚約してるのか?」
「はい!?」

 何を唐突に。


「いえ、してませんし、話すらありません。むしろ何で、そう思われるんですか。」
「いや、今日、家電を見ていたときの会話が、たまたま聞こえてきてな。」

 あー……。
 景品を選んでいる最中だというのに、羽村の奴は。


「(自分のマンションの)リビングの照明はこんな雰囲気で……。」
「寝室の間接照明も欲しいですね……」

 と、私に話しかけてきたのだ。

 田上先生は、私が賭けに負けて羽村の手伝いをしていることを知らないので、不思議に思っても無理はない。


「ちょっと色々あって、相談されてるだけなんです。あり得ない誤解なんで……。」

 羽村が聞いたら、心外きわまりないと、激オコだろう。


「――そうか。まあ、困ったことがあれば、何でも相談しろ。」

 田上先生はそう言うと、下車時に、小さな紙を渡してきた。

 中には、田上先生のものと思われる、メールアドレスが走り書きされていた。