「「え?」」

 皆の疑問顔をよそに、杵築は言葉を続けた。


「お前の誕生日に、たしか、笑っていただろう。」

 どうやら、エステに呼び出されたときのことを、覚えているらしい。


「――黒瀬さんの誕生日は、春休み中の3月30日のはずですが。その日に会っていたと? そして笑ったとは?」

 羽村は解説をしているのか、質問をしているのか。


「あー。いや、あの後、自分で色々試してみたんですけど。やっぱり、無理みたいです。」 

 インターネットでセルフ骨気というのを調べて、試してはみたのだ。
 でも下手くそなせいなのか何なのか、あのときみたいには、表情は戻らなかった。


「もう一度、あのエステに行けば、笑えるのか?」
「そうかもしれないですけど、一時的な効果なんで……。」

 すぐに戻ってしまうのでは、時間とお金をかけて行く意味もない。

 考えこむ杵築とは対照的に、声をあげたのは、愛花ちゃんだった。