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 黒瀬グループは、日本有数の財閥系グループであるが、本年度はやや経営が伸び悩んでいると聞く。
 大勢には影響ないとはいえ。こういうときこそ、気を引き締めるべきだし、社長の姿勢が問われるときだと思う。


 それなのに。

 私が案内された社長室は、驚くほど広くて、何と言うか……悪い方向にゴージャスだった。統一性なく、これでもかと置かれた調度品が、存在感を放っている。

 ある程度の風格は必要なんだろうけど、これじゃあ、調度品が台無しだよ。


 と言うかこの感じ、なんだか既視感があるかも。
 ゲームで見たことがあるのかな?   
 いや、ゲームではないような……、う~ん……。


――あっ。

「悪徳社長の部屋だ!」


「え?」

 父が驚いた顔でこちらを見た。
――しまった。声に出ていたらしい。


「ごめんなさい。大好きな韓国ドラマの中に出てきた、悪い社長さんの部屋にそっくりだったから、びっくりしたの。
 ドラマではね、最後は悪いことがバレて倒産しちゃうんだけど。パパは、良い社長さんなのに、似てるなんて思っちゃって、ごめんなさい。」

 私は頭を下げた。


「いや……。」

 父の目は泳いでいる。