私はあまり期待をせずに、電話をしてきた生徒に対し、当乳児院の寄附ルールを伝えた。
 すると、彼女は一切躊躇することなく、「匿名の寄附ということで、全く構いません」と答えたのだ。


――無私の心。


 ただ単に、子ども達に喜んでもらえたら嬉しい。
 そういう優しい気持ちを持っている生徒がいることに、私は少なからず感動した。


 子ども達は、プレゼントに大喜びだった。

 部屋の隅で一人、もくもくと遊んでいる輪くんを見ながら。
 私は、ブロックをくれた生徒――、黒瀬百佳さんの名前を、心に留めた。