私は順調にお客さん達を怖がらせていき、小さな子の中には泣き出す子までいた。
 お化け屋敷としては、大成功といえよう。


――やばい。面白い。

 これまで私は、自分は悪役令嬢とは違うと思って生きてきた。けれど実は、相当性格が歪んでいるのかもしれない。
 私がバッと腕を掴んだ瞬間、「わあっ!」と驚く人がいることの、何という快感だろう。


 しばらくして、杵築、愛花ちゃん、羽村の三人が入ってきたようだ。
 愛花ちゃんの悲鳴が、教室内に響き続けている。



 最初の獲物は杵築。

 杵築はうちのクラスのメンバーなので、お化け屋敷の内容は大体分かっているはず。
 でもお化け役はやっていないので、細かいことは知らないだろう。

 私は、杵築の姿を壁のマジックミラー越しに確認すると、絶妙なタイミングで、杵築の腕を掴んだ。


「うぉわっ!!」


 杵築は、変な声をあげた。

――ククク、王明の生徒会長様が、何という無様な姿。
 水族館でナマコを渡されたときの、お返しだ〜。