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 日曜日をはさんで、次の月曜日は祝日だった。

 週があけて登校する火曜日には、顔の腫れはだいぶん落ち着いていて、ちょっと見には、分からない程度になっている。 


「黒瀬、土曜日は悪かったな。大丈夫か?」

 生徒会で使う書類を運んでいるときに、和くんが通りかかった。


「大丈夫、大丈夫。」
「まだ鼻が赤いなー。」

 和くんが鼻を触ろうとしてくるので。両手のふさがっている私が「うわぁ。やめてよ。」と逃げ回っていると。
 羽村が声をかけてきた。


「黒瀬さん?」
「あ、すぐ行きますから。」

 私は和くんに「またね。」と言うと、羽村に書類を半分持ってもらって、生徒会室に向かった。


「黒瀬さん、いいですか。」

羽村が、歩きながら話しかけてきた。


「もし虐められているのであれば、必ず相談して下さいね。――虐めは絶対に許しませんから。」

 口調は柔らかいけれど、眼鏡からのぞく、その目は笑っていない。



『虐めは絶対に許さない』

 深い意味はないはず。今のはただ、生徒会の仲間として、かけてくれた言葉だよね?


――だけど。


 羽村によって、厳しく断罪されるというゲームでの展開が、頭をよぎって。

 無意識に身震いした。