――!!


 お嬢様が、喋った。


 私は、はじめて至近距離でお嬢様と目を合わせた。
 全く表情がない子だ、と思っていたけれど。よく見ると、その目には感情がある。


「……変ですね。」


 無意識に、笑みが漏れた。


 こんなにおかしな子どもは、見たことがない。
 お嬢様は、無表情のまま涙目になって、ショボンと項垂れた。 
 言葉を教えたこともないのに、いつの間に意思疎通ができるようになったのだろう。


――退職は、いつでもできるのだし。


 明日からは、このお嬢様に少しばかり話しかけてみるのも、悪くないかもしれない。