たまり場である倉庫から追い出された私は雨に濡れながら歩いていた。

歩いている感覚はない。ずぶ濡れになっても、声をかけてくれる人は誰一人いなくて。


当たり前だ。見知らぬ人を助けるなんて、よっぽどのお人好しか、助けるのにメリットがあるかのどっちかだし。

寒いはずなのに、心のほうが氷のように冷え切っていたから気にならなかった。


私、赤羽(あかばね)雪菜(せつな)は氷河中学校に通う2年生。

本来なら中学生として青春を送っているはずだが、私は普通の学生とは違う青春を過ごしていて……。


暴走族のMoonというメンバーの一人で総長の姫だった。姫は総長にとっての恋人のような存在。

暴走族のメンバーは総長と同じくらい大事にし、メンバー全員で守り抜かないといけない。


だが、実際のところ総長の蓮と私は恋人ではなかった。あくまでも友達以上恋人未満の関係を続けていた。今考えるとそれが追放された理由なのでは?と思ってしまう。


いくら考えても追放された後じゃ、どう足掻いても遅い。現に妹の真麗奈とは腕を組んでたし。

……付き合ってるのかな?告白したのはどっちだろう?なんて、くだらないことを考えて。


もう私にはなんの関係もないことなのに。