これで心置きなく返せると、菜乃花は颯真にメッセージを送った。

『こんばんは。鈴原です。今日、無事に自宅のマンションに戻って来ました。入院中は大変お世話になりました。それからお借りしていた本、どれもとても面白かったです。ありがとうございました。お返ししますね。宮瀬さんのご都合が良い時に、病院までお返しに伺いたいと思っています』

すると、思いの外早く返信がきた。

『こんばんは。元気そうで何よりです。ひとり暮らしに戻って大丈夫?何かあったらいつでも病院に連絡ください。本も、そんなに気に入ってもらえたのなら差し上げます』

颯真の返事に、ふふっと菜乃花は笑みを洩らす。

『お気遣いありがとうございます。実は、3冊とも面白くて手元に置いておきたくて、先程ネットで注文しました。だから心置きなくお返しします』
『そうだったんだ。ごめん、もっと早く伝えれば良かったね』
『いいえ。宮瀬さんだって、読み返したくなるかもしれないでしょう?』
『うん。でもその時は君に借りればいいし』
『それだと、誰の本だか分からなくなります』
『じゃあ、サインして渡そうか?サイン本みたいに』

あはは!と菜乃花は声を上げて笑う。

『それは欲しいかも!』
『著者でもないのにサインするって、笑えるね。お前、誰だよ?!って』
『ふふ。でも本当に欲しいです。私が注文した新品をお渡しするので、宮瀬さんのサイン本、頂いてもいいですか?』
『ええ?!本気で言ってる?』
『はい。本気で書いてます』
『あはは!そうか。書いてるね、確かに』
『じゃあ、来週の火曜日に病院に伺ってもいいですか?お昼休みとかでお渡し出来れば』
『分かった。急患がいなければ時間は取れるから。着いたらメッセージくれる?』
『はい。よろしくお願いします』
『こちらこそ。じゃあ、お休み』
『お休みなさい』

やり取りを終えた後、菜乃花は思わずふふっと微笑む。

なぜだか心が温かくなっているを感じながら。