君を愛していいのは俺だけだ~コワモテ救急医は燃える独占欲で譲らない~

 タクシーでマンションに帰ると、菜乃花はソファに座って早速颯真に借りた本を読み始める。

 心理士の道を諦めてからは、心理学の本も無意識に避けるようになっていた。
 新しく出版された心理学関係の本については、全く知らない。

 (こんなに面白い本があったんだ!)

 菜乃花は時間も忘れて読みふける。
 気づくと1冊読み終えてしまい、菜乃花は満足そうに本を閉じたあと、時計を見て、しまった!と顔をしかめた。

 (2時間も熱中しちゃった。少し休憩しないと)

 本を胸に抱えて、ふうと深呼吸する。
 そして、ん?と本に目を落とした。

 (宮瀬さんのおうちの匂いがする…)

 1度しか行ったことがないのに、なぜだか身体が覚えていた。

 (どこか爽やかで心地良くて、懐かしいような…。そう、図書館の匂いに似てる)

 菜乃花はもう一度本を胸に抱いて大きく息を吸い込み、ふふっと微笑んだ。