「わあ!なんて素敵なの…」

菜乃花は窓の外の景色に目を奪われている。

颯真はふと思いつき、左折して大通りに出ると、信号待ちの間に菜乃花に声をかけた。

「少し寒くなっても平気?」
「え?は、はい」

何のことかと首を傾げつつ菜乃花が頷くと、颯真はサンルーフのスイッチをオープンに入れた。

かすかな音と共に車の天井にガラス面が現れ、更に角度をつけてガラスが少し開いた。

「え、え、わあ!」

菜乃花は驚いて上を見上げる。
颯真はクスッと笑ってから、信号が青になるのを見て車を走らせ始めた。

「ひゃー!イルミネーションが真上に!!」

菜乃花は興奮して目を見張る。

「とっても綺麗…」

両サイドの並木道をキラキラと彩るイルミネーションの中を、ゆっくりと車で走り抜けていく。

菜乃花は思わず両手を組み、外の空気をヒンヤリと感じながら、聖なる夜の輝きにうっとりと見とれながら微笑んだ。

(さっきとは別人だな)

ようやく菜乃花の本当の笑顔が見られたと、颯真も思わず笑みを洩らした。