「おはようございます」
「おはよー」

夜勤のスタッフ達に挨拶した颯真に、ふわーとあくびをしながら塚本が返事をする。

「お疲れ様です。急患はありましたか?」
「んー、道端で酔いつぶれた若いお兄ちゃんが一人。しばらくここでスヤスヤ眠った後お目覚めになって、元気に彼女と帰っていきましたよー」
「そうでしたか」
「それで?お前の方はどうだったんだ?その様子じゃ、コテンパにやられるのは免れたんだな」

は?と颯真は怪訝そうに塚本を振り返る。

「は?って、おいおい。まさかお前、バックレたんじゃないだろうな?」
「何をですか?」
「果たし状だよ!三浦先生の」
「あーー!!」

颯真は立ち上がって大声を出す。

「マジか!今すぐ行ってこい!」
「はい!」
「生還を祈る。いざとなったら俺がマウストゥーマウスしてやるから」
「結構です!」

振り返って返事をしながら、颯真は小児科病棟へと急いだ。

「三浦先生!」

申し送りを終えてナースステーションを出て来た三浦に声をかける。

「おお、遅かったね、宮瀬先生」
「申し訳ありません!」
「いや、良かったよ。夕べあのまま俺を探しに来たら、その時はぶっ飛ばしてやろうと思ってたから」
「は?あ、あの…」

困惑する颯真に、三浦はニヤリと笑いかける。

「見たかったよ、かっこいい王子様のお姫様抱っこ」
「…はい?」

そして今度は真顔になる。

「もう二度と彼女を手放すなよ?」

しばしの沈黙の後、颯真は大きく頷いた。

「はい」

三浦はふっと笑うと、じゃあね!と背を向ける。
そして思い出したように振り返った。

「そうだ。これから俺のことは、三浦サンタ様と呼ぶように」
「…は?」
「じゃ、そういうことで」

そう言うと、今度こそ背を向けて去って行った。