わたしたちのそばまで歩み寄ると、たれ下がった目が十和田さんを見すえた。
「あなたにはもうすこし、品位というものを教えなければいけないようですね」
見るからに紳士そうな理事長。
おだやかに言うけれど、どこか教育者としてのきびしさを感じる。
「……っ」
思いもよらない人物の登場にあせったのか、十和田さんは口をつぐんだ。
そんな十和田さんに、理事長が問いかける。
「人のふり見て我がふり直せ。どういう意味かわかりますか?」
「え……」
十和田さんはなにも答えなかった。
〝人のふり見て我がふり直せ〟
たしか、悠琳くんに貸した電子辞書の履歴に残ってた言葉……。
「宮戸さん。わかりますか?」
話をふられてドキッとする。
「あ、はい。他人の行動のいいところや悪いところをよく見て、自分の行いを反省しましょう、です」
「そうです。十和田さんだけでなく、みなさんもよく心にきざんでおいてください」
理事長は十和田さんを見たあと、ホール全体を見まわしながらそう伝えた。



