「璃衣、よかったね」
「両思いおめでとう」
まるでタイミングを見計らっていたかのように、パチパチと拍手が上がった。
大きな拍手。
負けじと悲鳴も聞こえてくるけど、大きな拍手が会場に鳴りひびく。
メイド科や執事科だけじゃなくて、S学生の人たちも拍手を送ってくれている。
けれど、ただ一人、納得のいっていない人がいた。
「し、信じられない……!」
そう叫ぶように言ったのは、十和田さんだった。
目を開いて、オニの形相でこっちを見てくる。
「タカミ社長の息子ともあろうものが──」
そのせりふに続く言葉がなんだったのか、なんとなくわかるけど、十和田さんの口から聞くことはなかった。
たぶん、「貧乏人なんかと」って非難したかったんだと思う。
けれど、それを口にする前に、立ち上がろうとテーブルにいきおいよく手をついたことで、紅茶のカップがたおれてしまったんだ。
中にはまだ紅茶が残っていたらしくて、テーブルに水たまりができた。



