すると、その横顔がこっちを向いた。
「あら、貧乏人さん。なにかしら?」
「いえ……」
「今の話を聞いて、文句でもあるのかしら?」
「…………」
十和田さんと関わってもいいことはない。わたしは体の向きを戻した。
けれど、背中を向けても十和田さんの口撃は止まらなかった。
「よく、『親の財産のくせに』なんて負け犬のとおぼえをする貧乏人がいるけど、使えるものはなんだって使うのが賢いやり方よ。まあ、貧乏人はなにも持たないから、ほえるしか脳がないのでしょうけど」
ふんと鼻を鳴らして、十和田さんが向きを直ったような気がした。
文句があるわけじゃない。
十和田さんがなにをしようと文句は言わないし、なにを言われようと気にしない。
となりの席の奏音ちゃんも、
「あんなの無視無視」
と口をぱくぱくさせている。
気にしないのが一番なんだ。
でも。
わたしは立ち上がって、十和田さんのうしろに立った。
十和田さんが、
「なに?」
けげんな顔を向けてくる。



