今日のお茶会の場に悠琳くんがいないから、みんな残念そう。
S学生が悠琳くんと堂々と会えるのは、月に一回のこのお茶会の場だけ。
だから、このお茶会での交流に賭けていた子が多いと、奏音ちゃんが言ってた。
悠琳くんを狙っている子はたくさん。
わたし、悠琳くんが好きだと気づいたけど、ここにいる多くのお嬢さまたちと戦わないといけないんだよね……。
「亜加梨さんは、なんだかうれしそうね」
「ふふ。だって、みんなが哀れでならないんだもの」
ふいに、うしろから十和田さんの声が聞こえてきた。
振り返ると、うしろの席に十和田さんが座っていた。
「あたし、今度の夏休みにタカミ社長家族と会うのよ」
「ええ!?」
「パパに頼んで連絡を取ってもらったの。そうしたら、あっさりOKをもらえたそうよ。夏休みは家族で食事。これで花嫁はあたしに決まりね」
「ずるいわ! ぬけがけよ!」
勝ち誇ったような十和田さんの横顔が見える。