ユースケ・タカミ社長の『花嫁探し』の言葉は影響力が絶大で、いまだにS学もM学も悠琳くんを狙ってにぎわっている。


幸か不幸か、わたしはそのおかげで平穏な学園生活を送れている。

十和田さんも悠琳くんに夢中で、わたしと目が合ってもなにも言ってこないし。

このまま静かに送れるといいなあ、と思っていた。


けれど、そううまくはいかないみたい。



「璃衣、おはよう」

「お、おはよう、悠琳くん」

「電子辞書もってる? 次の授業で使うんだけど、寮に置いてきちゃって」

「持ってるよ。ちょっと待っててね」


わたしはそう言って、ロッカーから電子辞書を引っ張り出して悠琳くんに渡した。


「今日はもう使わないから、返すのはいつでもいいよ」

「あとでまた来る」


悠琳くんは、メイド科の子たちから熱視線を向けられるのも気にしてないようすで、平然と帰っていった。