「はい、どうぞ」
「今?」
「もちろん」
今ここで呼んでもらわないと意味がない。
つうか、呼んでほしい。
「ゆ……、ゆうり、くんっ」
「ん? 聞こえない」
「聞こえたでしょ?」
「ううん」
「……いじわる」
宮戸さんがむっと頬をふくらます。
聞こえたけど。
でも、もっとちゃんと呼んでほしい。
俺にほんろうされてほしい。
もっと俺の言葉に心をゆらして。
「悠琳くん!」
宮戸さんはやけになって、叫ぶように名前を呼んだ。
俺は、にっと笑う。
「よくできました、璃衣」
抑えきれない笑みをこぼしながら、彼女の頭をなでる。
どうしてイライラしてたのか、どうしてこんなにも気になるのか、今わかった。
俺は璃衣のことが好きなんだ。
好きだから、葉桐永遠との仲に嫉妬した。
好きだから、璃衣のことばかり考えてる。
ふしぎだ。璃衣がめちゃくちゃかわいく見える。
めちゃくちゃに愛でたくてしかたない。
恋って、気づいたらこんなに深く落ちてるものなんだ。