なんでかわからないけど、このまま別れるのはいやだと思ったんだ。
せっかく宮戸さんに会えたんだから、もうちょっと一緒にいてもいいじゃん。
すると、無理やり引き止めた衝撃で、宮戸さんの団子ヘアの片方がパラパラとほどけてしまった。
「わあ、髪が!」
と、あせる宮戸さん。
チャンスかもしれない。
俺はつかむ手に力を込めて、言った。
「俺が結んであげる」
「ええ!?」
驚く宮戸さんを引っ張って、段差に座った。
宮戸さんは段差の下、俺の足と足のあいだに座らせる。
「た、たかみくん……わたし、ひとりでできるから」
「俺に結ばれるのいやなの?」
「そ、そうじゃなくて……」
俺の足のあいだにちょこんと座る宮戸さん。
うしろ姿がプルプルとふるえている。
理由はなんだってよかった。宮戸さんを引き止められるなら、なんだって。
だから、テキトーに理由をつけたんだけど……。
そういや俺、団子ヘアの作り方は知らねえや。
さすがに鷹見家の教育でも執事科でも教えてもらわなかったな。