入学して一か月。お父さんのためにもがんばらなきゃって、思っていたんだけど……。
『あなた、やってくれたわね。わざとでしょ! あたしになんのうらみがあるっていうの!?』
『わざとじゃないです……!』
月に一回あるS学との交流会──お茶会で、わたしは不注意からお水をかぶせてしまった。
その相手というのが、輸入業をいとなむ社長の一人娘、十和田亜加梨さん。
初めてのお茶会で大失態をおかしたわたしは、その日から十和田さんのパシリをさせられることになってしまった。
電子辞書を貸せと命じられたら、次の授業で使うとしても貸さないといけないし。
ケーキ屋さんのケーキが食べたいと命じられたら、学校の外に出てケーキを買いに行かないといけない。
ケーキを買って持っていったら、『チェーン店のじゃダメよ。最高級のケーキを買ってきなさい』と言われて、電車を乗りついで買いに行った。
それがつまらなくなると今度は、貸した教科書にらくがきされて返されたり、執事科の盗撮をお願いされたり。もういじめだった。