そのあと、保健室に連れ出してタオルを渡すと、宮戸さんは自分の頭を満足にふくこともせず、すぐに手紙の修復をはじめた。

水気は取ったみたいだけど、乾かさないとかぜを引く。

なのに、彼女にとっては手紙のほうが大事らしい。


宮戸さんは、『お父さんからの手紙だから』と答えた。

今どきめずらしいなと思った。

父からの手紙をお守りとして持ち歩いてるなんて……健気だな。


『これは、入学して初めてお父さんから届いた手紙なの』


宮戸さんは、最初のほうこそ普通に話していたけど、


『わたしの、お守りなんだ……』


だんだん涙声になって、


『これがあるから、がんばれる……っ』


最後は、こらえきれなかったみたいに涙を落とした。


初めて女子に心をぎゅっとつかまれた瞬間だった。

彼女の想いが痛いほど伝わって、俺まで苦しくなった。


手を伸ばして励ましたのは、このがんばり屋な女の子を労れずにはいられなかったからだ。

俺は、宮戸璃衣の涙を心に刻み込んだ。