はじめは、ただ気分が悪いだけだった。


S学の十和田亜加梨にいじめられているメイドを、クスクス笑うまわりの連中。

笑いはしないけど、なにもしないほかのS学生。

立場上、助けられないメイド科の仲間。

うまくかわす案が思いつかないのか、しり込みする執事科のやつら。


いやな空気が充満して、気分が悪くなった。

だから、かばったんだ。


『そのへんにしとけよ』


彼女を。──宮戸璃衣を。


宮戸さんを特別視していたわけではない。

かわいそうだと思い、情けをかけただけだ。

だけど……。