今年の一月、父がひさしぶりに帰国した。

……いや、来日か。アメリカ国籍を選び、アメリカに住んでいるのだから。


来日したその日の夜、父に呼び出された。


「と、いうわけで、ユーリ。S城ジュニアハイスクールに入れ」


なにが、『と、いうわけで』だ。アホなんじゃねえの?


要約すると……。

日本におもしろいシステムの学校があると聞いた。その実態をたしかめてこい。

マネできるところがあればマネして、フリースクールに取り入れる。

ついでに、未来の花嫁候補も見つけてこい。結婚するなら日本人にしろ。

というのが、父の話だった。


父から学校のサイトを見せてもらった。名前はS城学園。

となりのM坂学園と姉妹校の関係で、M坂学園には執事科、メイド科なるものがあるらしい。

S学に入ってM学のシステムを研究しろ、というわけか。


「入るのはいいけど、花嫁は探さないよ」

「なぜだ?」

「つまらないから」


金持ちの学校に入るようなお嬢さまなんて、親のカネでものを言わせるわがままか、両親の期待を背負った真面目しかいないだろ。