「『L社社長、日本の中学校を訪問。学生からの恋愛相談にどぎまぎ』だって。はあ……」
奏音ちゃんが、十分前に入ってきた新着ニュースのタイトルを読み上げて、ため息をついた。
「世の中には社長と恋バナができる中学生がいるというのに、うちらは理事長と面談か。やる気が出ないなあ」
「そうだね」
「学費タダだから拒否できないし、面倒くさーい!」
奏音ちゃん、声大きい! ただでさえ目立ってるのに……。
ここは、S城学園の玄関ホール。
わたしたちは今、理事長が来るのを、ほかのクラスの女子数人と一緒に待っているところだ。
それはいいんだけど……。
ちょうどS学生の帰宅時間とかぶっているから、すっごく注目を浴びちゃってるの。
なんでメイド科の生徒が? と、にらみつけるような目。肩身がせまいよ。
「ていうか、理事長おそくない?」
たしかに。約束の時間になってるけど、まだ来ない。
やっぱり、理事長だからいろいろといそがしいのかな?