「情けない理由でごめんね」


パシられて得た情報だから、あまり自慢できる理由じゃない。


「そんなことない。どんな経験でも、ピンチをチャンスに変えたんだからすごいよ。今日は宮戸さんのおかげで助かった。ありがとう」

「そんな……! ぜんぶ鷹見くんのおかげだよ。わたしのほうこそありがとうだよ」

「ふっ。すげえ必死じゃん」


わ、わらった……。

鷹見くんも笑ったりするんだ。


執事科の人たちと一緒にいても、つねにSPみたいにクールな顔つきをしているから、めったなことじゃないと笑わないのかと思ってた。


男の子の笑顔を見るのは初めてじゃないのに、なんだか鷹見くんの笑顔だけ特別に見える。


「それじゃあな」


鷹見くんの用はそれだけだったらしく、ぽんぽんとわたしの頭をなでると、さっさと行ってしまった。


す、すまーとだ……。とてつもなく、さりげない。

頭をなでられるのなんて、奏音ちゃんや永遠くんで慣れっこなのに……どうしてだろう。

鷹見くんになでられるのだけ、ぜんぜん違う。

なんでかわからないけど、胸がすごくドキドキする。


こんなこと初めてで、ちょっとこわいや。