ん? そういえば、あのホテルって、近くに……。
「あの!」
ひらめいたことがあって、思ったよりも声が出てしまった。
「なに?」
鷹見くんと目が合う。
「ここのホテルの近くに、たしか老舗の和菓子屋さんがあったと思うんですけど……」
「え、ほんと?」
奏音ちゃんがたしかめてきた。
「コースに出せるような和菓子?」
「うん。夜おそくまでやってて、六人分の和菓子なら調達できるかもしれない」
あのお店には行ったことがあるから間違いない。
「どう、ですか?」
最終的な判断をくだすのは支配人の鷹見くん。たしかめないといけない。
鷹見くんを見ると、彼は目を見開いていた。
けど、すぐに真剣な表情に戻って。
「──てことで、いいですか?」
先生に向かってそう聞いた。
腕を組んで状況を見ていた先生は、
「よし、いいだろう。チェックアウトに入れ」
その瞬間、わっ!と歓声が上がって。
「璃衣、よくやった!」
奏音ちゃんからは、ほめ言葉をもらえた。
こうして、わたしたちグループMの接客シミュレーションは、無事に終わりをむかえた。



