今日、わたしはちょっとうきうきしていた。
教室から目的の場所へ移動する途中に、思わずスキップしそうになるくらい楽しみ!
「いいことあった?」
同じメイド科のクラスメイト、奏音ちゃんが聞いてきた。
奏音ちゃんは、ボブカットがにあう女の子。わたしがクラスで一番なかよくしている友だちなの。
体育とかで教室を移動するときは、いつも奏音ちゃんと、それから──
「次の授業が楽しみなんだろ?」
同じく、クラスメイトの葉桐永遠くんと一緒。
永遠くんはメイド科の男の子。
メイド科は男の子でも入れるんだ。
男の子のメイドは「ボーイ」と呼ばれるんだけど、圧倒的に女子の比率が高いから、総称して「メイド科」の名前がつけられたらしいよ。
「ふふっ」
「なに笑ってんの。きもいよ」
永遠くんは、見た目はおだやかそうな印象なのに、中身は毒舌で口も悪い。
「きもいはひどいよ」
「あ、怒った? ごめんねえ、璃衣ちゃん」
子どもあつかいするように、わたしの頭をなでる永遠くん。
口が悪いだけじゃなくて、わたしを子どもあつかいするんだ。ひどいよね。