やさしい人だなあ。

執事科は、エリート科とも言われるほどすごい人がそろっている。

そのなかでもトップの鷹見くんは、わたしには別の世界に住んでいるように思えて、ちょっとこわかった。


けれど、実際に関わってみると、そんなことはなかった。

やさしくて思いやりのある人。

鷹見くんは、人としても魅力がある人だったんだ。


わたしのかわりに手紙の修復までやってくれるなんて、本当にやさし……あれ?

今、鷹見くん、わたしの名前を呼んだ?


「わたしの名前、知ってるの?」

「生徒の顔と名前はみんな覚えたから」


全員って……。


「先輩たちも?」

「うん。S学も含めて」


そんな……うそでしょ?


この学校の中等部は、ひと学年執事科が一クラス、メイド科が三クラスある。

となりのS学の中等部も、M学と同じくらいの生徒数。

トータルすると、六〇〇人いる。


なのに、みんなの顔と名前を、たった二か月で覚えたの?


エリートの執事科って、みんなそうなのかな。

わたし、本当にすごい人に助けてもらったんだなあ……。