頭に二つのお団子、よし!
目と眉のあいだの切りそろえられた前髪、よし!
口の端を指でつり上げて笑顔、よし!
今日も失敗しないようにがんばらないと。
ピコン、とかわいらしい音が鳴って、わたしの肩がビクッと反応する。
ポケットから取り出したスマートフォン。これはひとり一台、学校から配られたものなんだ。
画面には【電子辞書を貸しなさい】とメッセージが入っていた。
すぐにまたピコンと音が鳴って、追加のメッセージが。
【5分以内に】
大変! ここからだと、走らないと五分以内に間に合わない。急がないと!
自分の電子辞書をロッカーから取り出して、大急ぎでとなりの校舎に走る。
その途中、キャー! と喚声が耳をつんざいた。
なに? ……あっ。
わたしと同じ制服を着た女の子たちが群がっている。その視線のさきには、黒い制服を着た数人の男の子たちが歩いていた。
すらりとしたスタイルの男の子たち。うちひとりの男の子と目が合った。
わっ!
びっくりしてとっさに目をそらす。