目から大粒の涙を流す私に、真人くんは紺色のハンカチを取り出し私に差し出してくれた。


「……本当、連絡できなくてごめん。実は歩いてる途中の道でお婆さんがいきなり倒れて、小石につまづいたらしいんだけど、念の為に俺も安心できる位置まで送って行ってたら今度は俺のスマホの電源がきれちゃってた」


 真っ暗なスマホの画面を私に見せる真人くん。


「良かった……真人くんに何かあったかと思っちゃった……」

 そう呟くと真人くんは私の元へ更に近寄り、私と目線が合うように屈んだ。


「長い時間待たせてごめん。まってて、自販機でなんか買ってくる!」


 そう言って真人くんが買って持ってきてくれたものは、私が手に持っていたココアの缶だった。


「それ、開けてなさそうだったから。これで温めて。そんで、これは俺がもらう」


 ――と、私の手から冷えた缶ココアを受け取った真人くんは、


「……由真、受験お疲れ。ひとまず、お疲れの乾杯ってことで」

 と、私の手から奪った冷えた缶ココアを、私に握らせたホットココアでカンと音を鳴らした。


「由真……俺、昨日言ってた返事してもいい?」


 真人くんは私の顔を覗き込むように見た。