目を覚ますと学校の図書室で、隣には八島くんがいた。

 は……八島くん!?

 ついに幻覚でも見てしまったのかと図書室のイスから転んでしまい、尻もちをついている私に「鎌田さん、大丈夫!?」と心配して手を差し伸べてくれた。

 恐る恐る手を伸ばしゆっくりと八島くんの手に触れると、ちゃんと体温があった。八島くんの手は温かい。


「八島くん……生きてるの?」

 目を見開き、うれし涙を流す私に八島くんは「えっ!? ど、どうしたの、鎌田さん。俺、死ぬわけないじゃん」と戸惑った表情をした。


 ……うそ、八島くんが今、目の前にいる。今、目の前で動いてる。ちゃんと生きている。

 涙を拭いてイスに座る。八島くんはパタンと教科書を閉じ「もうこんな時間だね」と問いかけた。

「う、うん……」

 携帯で日付を確認すると、中間テストに近い日付だった。

 ーーまさか、今日って……


「鎌田さんは、志望校……どうなった?」

 八島くんがふと、問いかけた。

 忘れもしない。この質問の後にどれだけ、『八島くんと一緒の高校に行く』と言えたらよかったか、と、後悔した。

 今日は八島くんが事故に遭って亡くなる日だ。