財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す


「僕の種を蒔いた花壇に水と肥料をやるのを忘れないで欲しいね」

「何ですかそれ?わけがわかりません。それに私にはそんなこと出来ません」

「出来るようになるよ。そのうちわかる。少しだけ辛抱して待っていなさい」
 
 そう言い残して去ってしまわれた。

 専務が辞められたその日から、今度は秘書室内で私への圧力が強まった。

 崇さんは他の秘書には無愛想だったのに、専務秘書の私には専務の手前だと思うが、気を遣って優しかった。

 そのせいで私は以前から、黒沢さんら彼を狙う秘書達に妬まれていた。別に何もないのに逆恨みもいいところだ。

 黒沢さんの周辺が皆同調して、私を役員秘書から外すよう頼んだという噂もあった。

 そうなのだ。私は、総会後も結局次の役員をあてがわれることなく、秘書課で雑用をし続けている。