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結局この日の稼ぎはゼロだった。
最近は特に若い女のコが多く、人数も増えてきたので日奈子を指名してくれる人が少なくなっている。

日奈子は白い息を吐き出しながら自分の暮らすアパートへと戻ってきていた。
6畳ひと間のボロアパートで、外階段を上がっているとギシギシときしむ音がして入居住人への迷惑を考えずにはいられない。

壁のあちこちには亀裂が入っていて、そろそろ改装工事をしなければならないのではないかと思う。
そんなアパートの2階の一番端が日奈子の部屋だった。

「ただいまぁ」
と、声に出して玄関を開けても誰も待ってはいない。

日奈子は都内にひとり暮らしをしている。
電気をつけると部屋の隅々までは見渡せるようになるが、そこに家具はほとんど置かれていなかった。

昔はアクセサリーが好きで集めていたのだけれど、今はそれも全部売っぱらってしまった。
寒い部屋の中にいても暖房はつけない。