ホストに恋して破滅した私ですが、高級キャバ嬢になってイケメンオーナーから愛されています。

そんな中、日奈子はひとりポツンと橋の上に取り残されたように立っていた。
せめて1人だけでもいい。

自分に声をかけてくれないだろうか。
そう思っている間に時間だけが過ぎていく。

もう、帰ろうか。
そう思い始めたときのことだった。

「あれ? 小平くんじゃないかい?」
聞き慣れた声で名前を呼ばれてつい振り向いてしまった。

そこにいたのは日奈子の会社の部長だったのだ。
いつも優しくて穏やかな性格をしている部長が、驚いた顔で日奈子を見つめる。

咄嗟に日奈子はうつむいた。
返事をしないことで人違いだったと思い、立ち去ってほしい。

そんな気持ちでいたけれど、部長はそのまま日奈子に近づいてきた。
いくら化粧をしていても至近距離で見られればさすがにバレてしまう。

日奈子は必死に顔をそむけて後ずさりをする。
「やっぱり、小平くんじゃないか。驚いたよ、昼間とは随分雰囲気が違うから」

部長の驚いた声が徐々に笑いに代わっていく。