ホストに恋して破滅した私ですが、高級キャバ嬢になってイケメンオーナーから愛されています。

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光に半ば強引に決められた旅行の前日、日奈子は自分の部屋で着替えの準備をしながらふと思い出したことがあった。
本棚へ向い、本の間に隠してあった写真を取り出す。

荷物の中身を捨てたあの時、それでも捨てることができなかったカズの写真だ。
写真の中のカズは相変わらず日奈子に笑いかけてくれている。

だけど、今その写真を見ても日奈子はなにも感じなかった。
あれだけ好きだった相手なのに、胸がときめくこともない。

「もう、あんたのことなんて全然好きじゃない」
ノアールで仕事を初めた当初はカズのことを思い出して胸が痛むこともあった。

だけど、今はもうそれもない。
日奈子の頭の中を占領しているのはカズではなく、光になっていた。

日奈子は光の手の暖かさを思い出しながら、写真を破り捨てたのだった。