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給料は家賃と水道光熱費、そして最低限の食費を差し引くと15万くらいが残る。
これをカズへのプレゼント代へ当てるとして、後はホストでの飲食代代をどこかで稼ぐ必要があった。

「全然足りない……」
冷暖房のないボロアパートの一室で、日奈子は毛布にくるまって呟く。

お金が足りない。
だけどカズに会いに行きたい。

カズに会うためにはお金がいる。
日奈子の頭の中ではグルグルと同じ思考が繰り返される。

もっともっとお金を稼ぐためにはどうすればいいか。
カズを自分のものにするためにはお金が必要だ。

思い浮かんでくるのは立ちんぼの橋の上だった。
今日もきっといろいろな女子が立ちんぼをしているはずだ。

みんな若くて可愛い子ばかり。
日奈子はゆるゆると起き上がり、冷たい水で会社用の化粧を落としはじめた。

立ちんぼで客が付けば温かいホテルで眠れるだけでなく、ご飯もおごってもらえる。
そう思うと、このアパートにいるよりかマシなような気がしてきてしまった。

日奈子は立ちんぼ用に購入したミニ丈のワンピースをフワフワのコートを着て、外へ出たのだった。