あのとき、ハッキリことわればよかったんだよね。

だけど小学生でもゾクっとするくらいきれいな笑顔が怖くて、わたしからそんな考えをうばった。
わたしは無言でうなずいた。

『空ちゃん、ずーっと仲良しでいようね』

アユちゃんに抱きつかれたわたしの心臓は、バクバクって不安な音を鳴らしてた。

***

最初のうちはずっと怖くてビクビクしてた。

だけどもう、それが当たり前になって、小学三年生のあの日からアユちゃんの作文もスピーチも弁論も、書けるときは全部わたしが書いてる。
だから今回の引退式のあいさつだって、わたしが書くのがいつも通りの自然な流れ。

わたしはあの日から一度も表彰されたことがない。

アユちゃんは自慢の幼なじみで、わたしは……アユちゃんよりも目立っちゃいけないんだってわかったから。