「あ、あの……」

いつも以上にか細くてうわずったような声しか出せない。

「なんで……」

うまく質問できないわたしに、先輩はほおづえをつきながら部屋の奥のパソコンを指さしてみせた。

「え……?」
昨日のことを思い出してみる。

昨日は小説を書いている途中でアユちゃんとの待ち合わせの時間になってしまった。
それであわててカバンに荷物をつめていたら、この先輩が入ってきて、びっくりしてよけいにあわてて部屋から飛び出した。

もう一度はじめから思い出し直しても、パソコンの電源を落とした記憶がない。

パソコンをつけたまま、小説サイトに〝雨音〟としてログインしたまま、この部屋から出てしまったんだ。

最悪。

この先輩、運動部で顔が広そうだからぜったい友だちに言いふらしてまわし読みされてバカにされる……最悪の未来がうかぶ。