ステージでのスピーチが終わると、北条財閥のご当主とその息子さんが招待客一人一人に直接挨拶をしてまわっている。
「はぁ……早くわたしも、シオンさまとお話がしたいわぁ」
うっとりとした眼差しで御曹司を見つめる聖来を、私は隣でオレンジジュースを飲みながら見ていた。
御曹司の名前はシオン……それじゃあ、さっきのあれは聞き間違いじゃなかったんだ。
そういえば薄らと耳に残るスピーチのときのシオンさんの声は、クラスメイトの紫苑くんのものと似ていた気もする。
ここでもまたそんなふうに思ってしまうなんて、どれだけ今の私の頭の中は紫苑くんでいっぱいなんだろう。
ゴクゴクと私は、オレンジジュースを一気に喉へと流し込む。
勢いよく飲んだせいで、グラスはあっという間に空になってしまった。
ジュースのお代わり、もらってこようかな。
そう思い、私が席を立とうと視線を下にやったとき。
赤い絨毯の上に、高級そうな革靴が見え……
「とても良い飲みっぷりでしたね」
「え……」
なんといつの間にか私のすぐそばに、御曹司のシオンさんが当主の方と並んで立っていた。



