「ああ。咲来は……誰よりも心が綺麗で、優しい子だからな。もっと自分に自信を持ったら良い」
え?
「聖来と二人、パパにとってはどちらも自慢の娘だから。将来はなるべく良い家に嫁いで、幸せになって欲しいと思っている」
……うそ。
予想外の父の言葉に、胸がじんと熱くなる。
まさかパパが、そんなふうに思ってくれていたなんて。
私は、ステージに立つ男の子をじっと見つめる。
ステージの彼は確かにかっこいいし、家のためには私か聖来のどちらかが選ばれたほうが良いということは分かっているけれど。
私は、高級そうな赤のペルシャ絨毯が敷かれた床に目をやる。
沢山の令嬢がいる中で、そもそも私が選んでもらえるなんて保障はどこにもないけれど。
私は、北条さまに選んで欲しいとは思わない。
だって私は……どれだけお金持ちでかっこいい人よりも、紫苑くんのほうがいいから。
頭が良くて。一度も嫌な顔をせずに、毎日私に勉強を教えてくれるような。そんな優しい紫苑くんがいいの。



