「見て見て。あの方が……」
「きゃーっ、かっこいいー!」
しばらくして会場のステージには、北条財閥の当主とその息子と思われる男の子が立ち、令嬢たちがザワザワし始める。
「キャー! あの方が北条さま!? 今日初めて見るけど、お美しいわーっ!」
私の隣で、聖来もキャーキャー言っている。
ステージに立っている北条のご子息は、サラサラの黒髪をセンターパートで分け、グレーのスーツをビシッと着こなしている。
自分と同じ中学生とは思えないくらい大人っぽい雰囲気で、遠目からでも分かるくらい彼はとても綺麗な顔立ちをしている。
そう。彼は紫苑くんと同じくらいか、それにも負けないくらいのイケメンさんだ。
「ねぇ、ママ。わたし、北条さまに一目惚れしちゃったわ! これはもう何が何でも気に入られて、絶対婚約者に選ばれたい〜っ」
「聖来ならきっと大丈夫よ。だってあなたは、この会場にいる女の子のなかで一番可愛いんだもの」
すごいな……ママと聖来、ものすごく熱くなってる。
「咲来」
どこか他人事のように、母と妹を見ていた私に、隣にいる父が声をかけてくる。
「お前も聖来みたいに、何が何でも自分が彼に選んでもらうのだと、強い気持ちでいなさい」
「私が……あの御曹司の方に選んで頂く?」



