「咲来」
私の頭に、紫苑くんの手がポンとのせられる。
「咲来は、出来損ないなんかじゃないよ。咲来はちゃんとできるってこと、こうして自分でもしっかりと証明できたじゃない。だから、もっと自信もって」
紫苑くん……。
「ありがとう」
今日は期末テストの翌日で、全てのテストの答案が返ってきた訳じゃないから、まだ最終的な結果は分からないけれど。
まずはこうして数学だけでも、聖来よりも良い点が取れたんだ。
今まで妹に一度も勝てたことのなかった私にとっては、とても大きな進歩だ。
「日々の努力が、ちゃんと結果に現れて。えらいよ咲来」
紫苑くんの優しい笑顔に、胸が甘く締めつけられる。
「ほんと、よく頑張ったな」
「ありがとう」
紫苑くんを見てると、胸のドキドキはおさまるどころかますます大きくなっていく。
さっきからずっと、胸が苦しい。
ここ最近、紫苑くんのそばにいると、なぜかこうなることが増えた気がする。
何なんだろう、これは。
もしかして私……病気なのかな。



