「それで? 聖来は何て言ってたの?」
数学の授業後の休み時間。
私は、紫苑くんの席へと先程のテストのお礼を言いにやって来た。
「あー、それが……」
あのあと聖来が私のところへ来て、横から数学の答案を覗き込み、悔しそうな顔をしていた。
そのとき聖来が手にしていた答案用紙には、84点と書かれていて。
『こんなの、たまたまでしょう。もしかして咲来ちゃん、カンニングでもしたんじゃないの?!』
「……って、言われたの」
紫苑くんに話しながら私は苦笑する。
「カンニングって。ほんと失礼なヤツだな。素直に負けたって認めれば良いのに」
「でも、どれだけ嫌なことを言われても。聖来のこともママのことも……やっぱり心の底から嫌いにはなれないんだよね」
私が幼稚園の頃までは母娘3人、ほんとに仲が良くて。
出かけるときには、よく3人でリンクコーデをしたり。川の字になって、一緒にお昼寝をしたり。
『せいらね、さくらちゃんのことがだーいすき』
幼い頃の聖来は、よくそう言って私にハグをしてくれたっけ。
「……っ」
昔のことを久しぶりに思い出したら、何だか少し泣きそうになる。
どうして今、3人の関係がこんなふうになってしまったのだろうと思ってしまう。
「まぁ一番の原因は、出来損ないの私にあるんだろうけど……」



